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浜岡原発の全面停止について

5月6日、菅総理が浜岡原発の全面停止を中部電力に要請しました。唐突な発表だったので、皆さんも驚いたのではないでしょうか。

今回は、これについての所感を書くことにします。

総理自身の説明によると停止要請の理由は「国民の安全・安心に配慮して」とのことでした。確かに浜岡原発は予想される東海地震の震源域に建っています。加えて防潮堤も東日本大震災と同程度の震災を想定すると高さが不足しており、危険性を指摘する人もいました。

しかし、今回の停止要請は各方面から疑問の声が上がりました。

理由のひとつは、停めなければならない明確な根拠が説明されなかったことです。

総理は不安材料として「今後30年間でM8以上の地震発生率86%」を挙げています。しかし「M8地震発生率86%」は直接的な停止理由になりません。福島原発の場合も原子炉自体は耐えています。これを理由とするなら、浜岡の原子炉がM8で損傷する根拠を示す必要があります。

予備電源の喪失については地震を原因とする説もありますが、これを停止理由には挙げていません。

防潮堤の高さ不足は重要な要素です。しかし、5月6日の会見では、新堤防の完成をもって運転再開の方針が示されませんでした。また福島を教訓とするなら、予備電源の喪失主要因は津波なので、現在計画されているように屋上と高台への電源移設で簡単に対応できます。

もう一つは、浜岡原発を停めることによって生じるであろう地域や経済の様々な問題に対して、善後策の説明がなかったことです。

中部地方には日本経済の屋台骨ともいえる自動車産業が多く立地しています。

電源が安定して提供されない可能性があると、企業はリスクを分散させるために海外への移転を考慮せざるを得ません。事実、いくつかの関連部品工場は海外への移転を検討し始めています。この問題への対応策は示されませんでした。

原子力産業にも影響があります。浜岡原発には関連企業を含めて約2,800人の職員が働いています。直接的には、停止期間(最低2年)の職員の雇用問題、出入り業者の業務喪失など。間接的には、人口流出による地元経済活動の低下などが想定されます。

燃料費の増加も深刻です。浜岡原発を停止している間、当面の電力不足分は火力発電で補うことになります。この場合、燃料費が年間2,500億円程度増えると試算されています。これを全て電気料金に反映させると20%前後の増加になるともいわれ、利用者の負担が大きくなります。

5月9日、中部電力は総理の要請を受け入れ、浜岡原発の全面停止を受け入れると発表しました。同時に「燃料費の増加分を利用者に負担させるわけにはいかない」として、政府への援助を要請しています。政府からの具体的な回答はまだありませんが、実現すれば結局税金で賄われることになり、結果的に国民が負担することになってしまいます。

同じく5月9日、海江田大臣は電事連からの「全国の原発を停止する予定があるか」との質問に対し「他の原発は安全。運転できるよう国が責任を持って説明する」と答えています。

翌5月10日には、総理自ら会見で「今後のエネルギー政策は一旦白紙にして検討する」と言い、記者からの「原発は縮小か?」の問に関しては態度を明確にしませんでした。

試算によると、浜岡原発停止による電力不足は起こりません。しかしこの試算は、休止中の火力発電所を全て稼働させ、例年通りの水力発電量が確保でき、夏が猛暑にならないという前提です。それでも余力はほとんどありません。ひとつでも前提が崩れると停電の可能性がある綱渡りの供給量です。

もちろん計画されていた東京電力管内への電力供給は不可能でしょう。そうなれば、夏季、首都圏で電力不足の可能性も出てきます。

浜岡原発は確かに様々な危険要素を包含しているため、一旦停止して対策を講じるのは必要だと思います。

しかし明確な根拠を示さず、想定される諸問題の対策もなく、再開の確認もできない状態での停止要請は、あまりにも先走りすぎだというのが正直な感想です。

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