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自立の道筋

 先日、町内の方がある地方新聞に投稿された記事を見つけました。一方的な報道により信憑性の伴わない情報が蔓延している今の日本の現況について、書かれていることに感銘を受けましたので、ご紹介させていただきます。

自立の道筋
 「国破れて山河あり」これは、中国・唐の時代に官職であった杜甫の詩「春望」の一節である。四千年とも言われる中国の歴史は、戦禍の歴史でもある。
 わが国が先の大戦で焦土と化していた頃、国民は途方に暮れながらも、自立の道を懸命に模索していた。何処の家庭でも、日々食べていくことに辛苦していたが、一方では、極度に物資が乏しい中でも、人々が助け合う光景が随所で見られた時代でもあった。丁度、筆者が幼少の頃である。
 あれから六十数年。時代の主役は、私達から子や孫子へと徐々に移り、今の日本社会は、再び大きな曲がり角に差し掛かっているようである。
 昭和の時代に高度経済成長を果たした日本は、世界でも稀に見る豊かな国へと姿を変えた。その豊さは、形ある「物資」だけにとどまらず、メディアやIT等の発達を通じて、形のない「情報」の氾濫さえももたらした。使い方によっては人々の心を豊かにするのが「情報」であるが、時として人々を誤った道へと誘う厄介者でもある。
 近年、活字や電波を巧みに操る者達が、社会の中心から様々な情報を発信し、世の中の雰囲気を作り出しているのは紛れもない事実である。しかし、現況はどうか。真実かどうかの確認や信憑性の伴わない情報が蔓延し、意図的に操作された世論調査が政局を揺さぶる。さらに、それによって国政が著しく不安定化している。これまで先人達がコツコツと築き上げてきた国際的な信用も、ここに来て威信を失いつつある。また、「維新」と言う言葉を乱用し、先見性を欠いた政治家志望者達を煽り立て、さらなる混乱を増幅している。これが今の実態ではないか。
 国破れた極限状態から、今日の経済大国にまで築き上げてきた素晴らしい国民性のDNAは、何処で途絶えてしまったのか。誇り高き日本人の心に仇するような邪鬼達を成敗する真の英雄は、いつ現れるのか。杜甫の詩「春望」は、今の日本を物語っているようである。

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